神よ神よ

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小滝透 著

 著者は昭和23(1948)年、京都市生まれ。サウジアラビア王立リヤド大学文学部アラビック・ラングウェッジ・インスティチュート卒業。世界の“四大宗教”に造詣が深く、評論家として作家として活躍中の人物です。
 本書は、教祖(おやさま)ご誕生200年(平成10・1998)の記念出版として、前年の12月に刊行されたもので、一人の信仰者の目を通して教祖を描いた文学作品です。主人公が教祖にたすけられたところから始まり、教祖が現身(うつしみ)をおかくしになるまでが、主人公の独白の形で書かれています。
 著者は、比較宗教学的な観点から、世界宗教としての天理教に迫る作品を多く書いており、教祖に関するものも、本書以外に数作、著しています。本書を書くにあたっての思いを著者は「あとがき」で、次のように記しています。
「散文的にかくのではなく、できる限り実存的文学的に書いてみたいというい思いにかられた(中略)。なぜそのように書く必要があったかははっきりしている。宗教的な対象を書く場合、単なる現象的な記述では、とうてい表せない事柄が多いからである。そのため、少々の現実は無視しても、対象の精神に肉迫しなければ真実(宗教的実存)を表せない状況が現出してくる。(中略)――とすれば、後は文学的フィクションを通じて肉迫するしかほかにない。今回の作品は、その事を念頭においたささやかな試みである」
 読み進めるうちに、教祖ご在世時と現在との時間的な隔たりを超え、次第に自分と主人公が重なってくるでしょう。教祖のひながたを身近に感じるための、一つの“教祖物語”として、お読みいただきたい一冊です。
四六判上製/180ページ

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