道友社 編
天理よろづ相談所病院「憩の家」は、診療科目数25科、許可病床数1000床(白川分院含む)を超える国内有数の総合病院です。信仰と医療と生活の3面からの救済を目指し昭和10(1935)年、「天理よろづ相談所」が設けられ、31年後の昭和41年、規模を拡大して、おやさとやかた西棟に「財団法人天理よろづ相談所『憩の家』」が開所しました。
現在、同病院では、医師、看護師、医療技師など総勢1700人以上が24時間、昼夜の別なく働いています。その中では、生と死にまつわるドラマがあり、それを取り囲む人間模様が織り成されています。
本書は、「憩の家24時」取材班が平成9(1997)年1月から3年にわたって『天理時報』に連載した「憩の家」のルポルタージュをまとめたもの。58編に描かれているのは、普段は知ることのできない、「憩の家」を支える人々の心の軌跡です。
毎朝1時間早く出勤してエレベーターの掃除をする係員は、「みんなに気持ち良くエレベーターに乗ってもらえるよう時間の“お供え”をさせていただいています」。ひのきしんの修養科生たちは、「足元の床をきれいにすることによって、低い心をつくる勉強をさせてもらっている」と。「最近、調剤をしていると、薬の向こうに患者さんの?顔?が浮かぶ」という薬剤師や、「もう何年も見覚えのあるパジャマを見ると、やはり胸が痛む。だからこそ、より快適に、より心を込めて仕上げていきたい」という洗濯係長。
一話一話からは、ここが単なる病院ではないことがあらためて感じられ、「病む人が身も心も憩える場、陽気ぐらしを味わえる場を」という創設の理念が、いまも脈々と息づいているのが分かります。まさに感動の書です。
四六判並製/288ページ