道友社 編
「ご存命の教祖(おやさま)にあてて、お便りを差し上げられたら……」。『天理時報』紙上で平成元(1989)年から12年まで連載された、読者投稿欄「拝啓おやさま」。
本書は、12年間に編集部に寄せられたおよそ1000通のうち、掲載された約600通の手紙の中から55編を取り上げ、一冊にまとめたものです。教祖への思慕の情を込めた手紙の選集という意味で、「道の子の“心の文箱”」との副題が付けられています。
手紙の合間には美しい草花の絵と短い言葉が添えられています。これら22枚のカラー挿絵は、『あわてるからあかんのや』(道友社刊)の著者、堤保敏氏(知的障害者施設「堤塾」塾長)による“描き下ろし”です。
収録された手紙は、天理教の信仰のない人にも読んでもらえるように選ばれています。
家族の出直しというつらい節目の中に、教祖の温かいまなざしを感じ取り、心を奮い立たせる遺族ら。阪神淡路大震災の直後、ファックスで送られてきた被災者の生々しい声。余命いくばくもないと医者から告げられたようぼくが、病院のベッドで、今“生きている”喜びを、神と人への感謝の思いを込めて語った話など。
話題としては「十年ひと昔」の感もありますが、どの手紙からも、「おやさま、おやさま……」と祈りつつ、いま足元にある喜びを見つめ歩みを進める人々の、ありのままの声が生き生きと伝わってきます。
「まえがき」は、こんな言葉で締めくくられています。「どうぞ、心静かにお読みください」。お見舞いに好適の書です。
四六判並製/216ページ