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堤保敏 著『あわてるからあかんのや――知恵おくれの仲間に学ぶ』の7年後に刊行された、第2弾です。
法隆寺の近く、奈良県斑鳩町に知的障害者を預かる私塾「堤塾」と剣道場「以和貴(いわき)道場」があります。著者は、その2代目塾長であり、道場長です。
「堤塾」は、創設者の堤勝彦氏が昭和18(1943)年、4人の知的障害児を、大阪の自宅に預かったことに始まります。以来、勝彦氏は私財を投じて「塾」を営み、「塾生」と呼ばれる知的障害の人々を“家族”として迎え入れてきました。「以和貴道場」は45(1970)年、知的障害者教育を通して得られた教訓を、広く子どもたちに伝えたいと「塾」の敷地内に開かれました。
天理大学剣道部員であった著者は44年、大学を卒業後、「堤塾」の門をくぐります。そして57年、先代亡きあと、「塾」と「道場」の主宰となりました。本書には「塾のうちそと」「道場のうちそと」と題して、それぞれ14編、12編のエピソードと著者の思いがつづられています。
著者は「塾生」や「道場生」との日々を「私は道場で特別なことは教えていない。人の道をはずさないように『ほんもの』を見つめて歩くようにと、当たり前のことを教えているにすぎないのだが、それとて旬が来てその場に立たされないと、その意味を理解してもらえないのだ。私の仕事は、今日種を蒔(ま)いて明日花を咲かせるようなものではないのである」(「あとがき」から)と記しています。
一話一話の文章からは、著者の温かな人柄が伝わってきます。それはどこからくるものなのでしょうか。一度読んで、温もりの源を探してください。
四六判上製/266ページ
目次
塾のうちそと
- 塾と道場の風景
- 三歳児
- Kちゃんの贈り物
- 神の仕業
- タイガースファン
- へその緒
- インフルエンザ
- ツバメの宿
- 寒の大根
- みんなの歌
- コーヒー一杯の幸せ
- うしろめたさ
- ダイジョウブ?
- 三百六十五分の一
道場のうちそと
- 山に聴く
- いいところ三つ
- ちょっと待って
- メダカの学校
- 大和路晩秋
- ワイルド
- ロシアの旅
- 三つの心
- カナリア
- みてござる
- くらべてみるおろかさ
- ほんものの豊かさ
あとがき
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